西暦1600年4月19日、オランダ船「リーフデ号」の航海士を務めていた 三浦按針ことウィリアム・アダムスはイギリス人として初めて臼杵の黒島に辿り着き、日蘭交流の礎を築きました。
三浦按針没後400年・日蘭交流420周年を迎える大きな節目であった昨年、予定していた多くの記念事業がコロナ禍のため中止・延期となっておりましたが、この度ショートフィルムの製作を企画、1年越しで公開させていただく運びとなりましたので以下に概要のご案内をさせていただきます。
「今から400年以上昔、コンパスと、太陽と、風と、潮の流れだけを頼りに冒険者 たちが未知への挑戦を繰り返していた大航海時代、按針はその視界のはるか向こう側に何を見ていたのでしょうか。そして現代、溢れかえる情報に想像力を奪われた私たちは、携帯画面の中に世界を縮小し、無限に広がっているはずの可能性をすべて経験したかのように錯覚します。もし按針が今の時代を生きていたとしたらどうでしょう。彼ならきっと、望遠鏡で見える世界のさらに先にある未知へ向かって躊躇なく進んでいくのではないでしょうか。これからの未来を担う若い皆さんが無限の想像力をもって人生という航海へと旅立つとき、この作品が皆さんにとってのコンパスのように行く先を示すことができたらと心から願っています」(脚本・監督 梶原涼晴)
【あらすじ:凜の旅立ち篇】
2020年春、臼杵市佐志生黒島の海岸沿いを歩く三浦按針。彼は上陸当時失くしてしまったコンパスを探すために再び黒島を訪れたのだ。没後400年の時を経た今もなお、航海の途中で死んでいった仲間たちと会えずにいるためだった。
一体どこで落としたのか、いつまで自分はコンパスを持っていたのか、22カ月間に及ぶ苦難に満ちた航海を振り返る按針。
過酷を極めた天候と飢えによって死んでいった多くの仲間たち──
そして臼杵で知った住民たちの優しさ……
『しかし、ここは本当に私が愛した臼杵なのか……』。現代の臼杵に少しの違和感を覚えながら望遠鏡を覗くと──対岸に佇む一人の女の子。
あの当時の優しさに触れようと女の子のもとへ近づくと、遂にコンパスを見つける按針、『やっと天国の皆に会える……』。しかし一方で、そのきっかけをつくってくれた彼女は膝を抱えてうつむいたままである。違和感の正体を彼女に感じた按針は、かつて自分を必死になって介抱してもらったことへの恩返しをするかのように寄り添い、優しく語りかけ……